インテリアデコレーションエクセルシアーの基礎知識
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9る。そんな中、欧米の大型総合インテリアショップの出店、国内大型量販店のオリジナルブランドの確立などにより、デザイン性の高い、価格の手頃な家具や雑貨が手に入るようになり、それまで我が国のインテリアの中心を担ってきたインテリア産業メーカー等とは異なった視点での価値観が広まり、消費者の選択肢や趣向は広がっている。これまでの日本のインテリア産業メーカーの製品は、デザインに加えて品質を重視する傾向が強かったため、上質ではあるが安価ではなかった。そのため、家具などは住宅を新規で購入・建築する際にまとめて購入する場合や、予算が充分ある場合を除いて、一般消費者が気軽に模様替えを楽しむことが難しかったのである。機能的で、色・柄・デザイン・サイズも豊富なうえ、価格も手頃な商品を取扱う店舗の出現は、より多くの人のライフスタイルに影響を与え、今までインテリアに関心のなかった人までもがインテリアに興味を持ちはじめるきっかけとなった。そして、インターネットの普及により居場所に関係なく誰でも欲しい情報を手軽に入手できるようになったことで消費者はさらなる選択の幅が増え、より多くの人が、住まいや空間をつくるプロセスに関わり、選択できる機会を得たのである。また、よりたくさんの物を眺めたり比較したりすることで美意識が高まり、消費者のインテリアに対する目利きやセンスに対するグレードや価値観も向上したともいえるであろう。しかし、選択肢が増えたからといって消費者の誰もが適切な物選びができるとは限らない。さまざまな物が溢れ、欲しい物が手に入っても、家具の配置がうまくできなかったり、上手なディスプレーの方法や組み合わせのコツがわらないということもあるだろう。断片的に、専門的な本を読んでもその答えを見つけることは実際に難しいだけでなく、どれが自分に合っているのかを専門家にアドバイスしてもらうことも簡単にできないのが現状である。さらに、インテリアの専門家たちに対しても時代の移り変わりとともに変化の兆しがある。現在、インテリアに関して日本国民のレベルは徐々に向上しつつある。その理由のひとつは、インターネットが急速に普及したことで、情報が均一に波及し、室内環境に対しても要望や価値観が多様化したことが挙げられる。消費者の知識レベルは向上し、それゆえに、これからはインテリアを扱う専門家もさらに広く深い情報や市場の商品知識、そしてコーディネート力が要求されるようになってきた。消費者は自分が知っている以上に、専門家の知識や技術に期待をし、そのうえで自分に提案されることを待っているのである。そのため、その期待に応えるにはインテリアの担当者が自らの意思で情報や見聞を広め、さらに実践的な装飾や演出の技術を磨くことが大切であり、今後こうした個々の能力差は、次第に拡大、差別化されていくであろう。欧米では専門的にこのような総合的なデコレーションを行う人の職業を総称して「インテリアデコレーター」と呼んでいるが、日本にはこれと同様な職種はまだ存在しない。そのため、もっとも近いものは「インテリア コーディネーター」(以下ICと略す)とされているが、本来ICの資格制度において「インテリアエレメントの流通過程において消費者に対し、商品選択とインテリアの総合的構成等について、適切な助言と提案を行う人」をICの定義としている。その定義どおり、実務ではコンサルタント的な営業としての役割が強く、商品の販売も仕事の中心で、その範囲に「装飾」は多く含まれていない。しかし、時代の変化とともに「顧客のICへの期待」や「要望」が大きく変化していることは事実であり、デコレーターに近い仕事をしている人ももちろん存在するが、少数であり、その力量を判断する基準はない。また、所属している会社の専門分野や、担当の顧客によっても受け持つ仕事内容がわかれるため、最終的にはIC個人の力量によって行われているのである。内装材や住宅設備の色の選定に留まらず、家具・カーテン・照明器具などの選択、さらに細部にわた第?章 インテリアデコレーション エクセルシアーとは

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